チェンソーマンに登場するパワーは血の魔人である。
作中で見せ場が多いキャラクターなので、ここでおさらいしておこう。
魔人と悪魔
チェンソーマンに登場する用語としては、魔人というものがある。
魔人は悪魔が人間の死体を乗っ取ったものである。
人の人格は残っておらず、主人格は悪魔になる。ちょうどヤドカリみたいなものだ。
悪魔からすれば、人間の体は宿に過ぎず、そこに住むことで生き永らえているのだ。
なので人間に近い姿をしているが、本性は悪魔そのものである。人間を見ると好戦的に襲い掛かってくるケースが多い。
身体的特徴など、
魔人の特徴としては、頭が特徴的な形になっている。角が生えていたり、変な仮面をつけていたりする。
多くは悪魔時代の特徴を引き継いでいるが、パワーのようにあまり関係がないものもいる。
魔人の強さ
悪魔時代と比べ、かなり弱体化される。
弱体化した例
銃の悪魔などは本来は怪物的な強さだった。
が、魔人化した際は1000分の1にすら満たない戦闘力に抑えられてしまった。
超人的な肉体を持つ悪魔からすると、人体は貧弱すぎるのだ。
ジェット機のエンジンを軽トラにつけても、本来の力を発揮できずに持て余すが、それと同じことではないか。
魔人としてのパワー
パワーは本来、血の悪魔だった。
それが人を乗っ取って血の魔人になっている。
そして、マキマにつかまり、公安で働くことになっている。
パワーは魔人としては非常に知性が高く言語を理解できる。
そして日常的な生活を営むことも出来る。それもあって、人間と生活することが出来る稀な魔人であると言える。
公安における立ち位置
弱体化したとはいえ、魔人は強力な戦力である。
意思疎通が取れて、血の悪魔の能力を行使できる点は戦力として頼もしい。
魔人としては高い知性を持つが、人間からするとめちゃくちゃ頭が悪い、しかしその点も思い切りの良さに加算されて、先陣を切る役割を担ったりしている。
戦いにおける発想もそこまで悪くなく、意外とボロが出る場面は少なかったりする。
作中におけるパワーの実力はいかほどに
作中でパワーはデンジの相棒として敵と対峙していく。命知らずなデンジとともに、どんな敵にも勇猛に向かっていく。
非常に思い切りのいいコンビではある。
血の魔人という名から連想できるが、血を活用して戦う。
使い方としては、血を自在に固めることが出来、武器を作ることが出来る。それによって状況に応じて対応することが出来る。
ある時はトラップに、ある時は槍で貫き、ある時はハンマーとして叩き潰す。
それが上手く使えていたかと言えば、微妙。
しかし、この優秀な力を初期は持て余していた。パワー自体敵を翻弄することを好まないタイプだった。
初期の頃は自分の血で適当な武器を作って敵を殴りかかると言うワンパターンな戦い方しかできなかったのだ。
それでも、作中中盤において稽古をつけてもらうと、本来持っていた戦いのセンスが磨かれて、デンジの優秀なバディへと成長する。
ただ、作中においては。
公安においては優秀な戦力になった。
しかしあくまでも、公安においては、である。
圧倒的な実力を誇る上位勢の悪魔の前ではなすすべなく倒され、そして怯えるようになる。
もともと、精神的に強い方ではなく長い物にまかれるタイプなので、真の強敵が出てきた時にあまり頼りにはならないかもしれない。
しかし、強い信頼関係があれば、頼もしい相棒になることは間違いない。
作中におけるパワーの役割について。
作中において活躍していたパワーはどんなキャラクターだったのか。
一言で言えば、
妹
だったと言える。
チェンソーマンという作品は人と人とのつながりを掘り下げた部分がある。
主人公のデンジは家族がおらず、その中で社会としての生き方を学んでいき、対人関係を築いていく。
対人関係において最も身近なものは家族であるが、パワーはデンジにとって妹的な存在だった。
強力な魔人だが、人としては実に弱い
パワーは常識がなく一人で生きられない。
平気でうそをつくし、自分の間違いも何食わぬ顔で責任転嫁する。
家事全般も当然できず、人間社会で生きていくことはかなり難しい状態だった。
デンジに与えた影響
そして主人公のデンジもかつてはパワーのように社会常識一つ持たなかった。
しかし、自分よりも頼りないパワーが一緒にいることによって、
自分がしっかりしなければいけない
という自覚を持つようになる。
それによって、徐々に家事や社会常識を身に着けていく。
パワーにとってデンジはいつしか、兄のような存在になっていた。いつしか頼るようになった。
そして、頼られたデンジは人としての自覚をもって生き始めるようになる。
社会的な常識を身に着けて、他人とのトラブルもめったに起こさなくなった。
作中を繰り返し読むことで分かるのはデンジの自立心である。
自分がしっかりしなくてはいけない。
行動の一つ一つからそういった所作が見て取れるようになる。特に闇の悪魔と会いまみえた後にはその傾向が強くなる。
そして、強くなったが故に葛藤を抱いて、迷うことも増えた。
パワーは作中における哲学的部分において外せないキャラ
その背景には弱くてほっておけないパワーの存在があったことは間違いない。
人は、自分よりも弱いものがあるとき、強くなろうとするのだ。
その強くなる過程で、色々なことを知ることになる。その結果、知らなくても良いことを知ってしまうこともある。
デンジもただ生きるだけではなく、誰かを思いやる様になり、過去を悔いることが増えてしまう。
そして、自らの存在意義を深堀し、悩みに悩み、結論を出すのだ。
この一連の部分には、少年漫画らしからぬ、人間的な成長があるように思えてならない。
で、そういった哲学的な部分もチェンソーマンという作品の面白さではあるのだが、主人公のデンジの人間的な成長を描くうえでのキーパーソンとしてパワーは大きな役割を果たしているのだと思う。
パワーの成長について。
そんなパワーだが、全く成長していないわけではなかった。
戦いにおけるセンスはもちろんのこと、人間的にも大きく成長したと言える。
最終戦においては、自身の体を投げ打ってまで戦えるようになった。
最後について
ここからはネタバレになります
主人公にとって相棒的な存在だったが、死亡してしまう。あまりにもショッキングな内容で立ち直れない読者も多かったのではないかと思う。
実はパワーはデンジとチェンソーマンの契約を破棄させるようの捨て石として使われていたのである。
仕組んだのはマキマである。
マキマはチェンソーマンの能力を欲していた。
しかし、当のチェンソーマンはデンジと契約しており、その姿を現すことはなかった。
チェンソーマンの力を手に入れるためには、まず、デンジとの契約を破棄させることが第一になる。
デンジとチェンソーマンの契約内容
デンジが幸せな生活を送れること
しかし、ただ生きていられるだけで最高なデンジはすでに幸せだった。
チェンソーマンとデンジの契約を破棄させるのは難しかった。
そこでマキマは
家族というものを与えた。
早川アキ、パワーという兄や妹になるであろう人物と一緒に住まわせた。
さらに仕事を与えて、やりがいや苦悩を与えた。そして日々美味しいご飯を食べて、寝る。
そこには普通以上の日常があったのである。
デンジは困難の乗り越え、早川アキやパワーとこの上なく大きな信頼関係を勝ち取った。
そして、幸せに満ちた。
そこで、マキマはそれを奪いさるのである。
銃の悪魔に早川アキを射殺させ、さらにはその死体を銃の悪魔に乗っ取らせる。
その結果、銃の魔人として早川アキは生まれ変わり、デンジと殺し合う羽目になる。
デンジは決死の覚悟でアキを殺害し、心は絶望に叩き落される。
その先でパワーも、銃の悪魔の力で上半身を消し飛ばされてしまう。
絶望の淵に落とされてしまったデンジはチェンソーマンとの契約は破棄となる。
そして、現世に姿を現したチェンソーマンはマキマと対峙することになる。
まとめ
血の魔人であるパワーについて書きました。
見る人からすればうっとおしいパワーだが、作品を繰り返し読むことでその可愛さに気づくことが出来るだろう。
最初の頃は敬遠していたが、読んでいくにつれてこのキャラクターの魅力に引き込まれてしまった。
こういったキャラクターの掘り下げが出来る余白を残しているのも、この作品の面白さではないだろうか。